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それは、時を駆ける試み。

博士論文の概要

桂離宮現地調査で観測された香りと風の路

匂いの風景論;庭園における複合的感覚体験の分析 THE SCENTSCAPE ; Multi-Sensorial Analysis of Olfactive Landscape Experience in the Gardens

研究の目的

庭園における「匂い風景」という視点を提示し、そのあり方を考えるために以下の3つの庭園空間を題材として日本人が庭園植栽の匂いをどのように受 け止め、どのような「匂い風景」を描いていたのかについて検証を行う。 またその結果、「匂い風景」に普遍的に存在するものを見出し、それらに基づいて現代が受け継ぐべき「匂い風景」を指し示す。

研究の題材とした3つの庭園空間

■『源氏物語』における庭園の「匂い風景」
⇒『源氏物語』全54帖を題材としてその記述を分析することにより、王朝文化の粋を極めた平安時代の日本人の意識の中に庭園植栽の匂い・香りがどのように受けとめられていたのかを明らかにした。
■桂離宮庭園における「匂い風景」
⇒ 八條宮家初代智仁親王および第七代家仁親王が詠まれた歌を中心として宮内庁書陵部の資料を調査し、親王たちが庭園の匂いをどのように受け止めていたの か分析を行うことにより、桂離宮造営時における『源氏物語』の影響を「匂い風景」という視点から検証した。また、園路および舟上において一年を通して現地調査を行い、各地点における温湿度、空間で感知される匂い、空間的特徴、などの観測データに基づいて、現代の桂離宮における「匂い風景」を分析した。
■茶の湯の空間における「匂い風景」
⇒ 都市の民衆文化として成立した茶の湯の空間において、匂い(香り)の要素は意識される存在であったのかどうか、そうであるならばそれはどのような「匂い風景」を創り出していたのか。茶書を題材とした調査、および武者小路千家官休庵露地における現地調査によりその存在を明らかにした。

結論

「匂い風景」の根底に存在するものは、その場所に漂う匂いを中心とした風景の複合的な感覚体験としての享受、風情の時空間的な享受、である。それは次のように図式的に捉えることができる。「匂い風景」=「意識化されないベースの匂い風景」+「時空間的な変化を伴って出現する匂い風景」。 実は意識化されないベースの匂い風景こそ、その空間らしさを無意識のうちに感じさせる「匂い風景」を創りだすものであり、風情を醸し出す重要な要素である。これから受け継いでいくべき「匂い風景」の現代的意義は、意識化されない潜在的な「匂い風景」の重要性を認識することから始まると言えよう。

桂離宮の画像

桂離宮の画像